黒ナンバーの任意保険|個人事業主が確認する補償内容

黒ナンバーの任意保険|個人事業主が確認する補償内容

黒ナンバーを取って配送を始める前に、必ず決めておきたいのが任意保険です。自家用車で入っていた保険を、そのまま使えると思っていたら、事業用の車には条件が合わなかった、という話は珍しくありません。毎日長い距離を走り、お客さまの荷物を預かる仕事だからこそ、補償の中身をきちんと確認しておくことが大切です。

この記事では、黒ナンバーの車で必要になる保険の考え方、自賠責保険で補償されない範囲、運送人としての荷物の責任(商法)、任意保険で確認したい補償の項目、保険法が定める告知義務、加入の進め方とリース車の場合の注意点を、国土交通省の資料と法令をもとに整理します。保険料や補償の細かな条件は、保険会社によって異なるため、特定の商品はおすすめしません。最終的には、各社の説明と約款で確認してください。

この記事のポイント

  • 自賠責保険はすべての自動車に加入義務があるが、補償は人身事故の対人賠償のみ。物損事故は対象外
  • 運輸局の案内では、貨物の運送に関し損害賠償に対応できる任意保険(共済)への加入が必要とされている
  • 商法は、運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間に、運送品が滅失・損傷したときは、損害を賠償する責任を負うと定めている。荷物の補償を、自動車保険だけで足りると考えない
  • 保険法は、保険会社が告知を求めた重要な事項について、事実を告知する義務を定めている。使用目的や運転者の範囲を、正しく伝える
  • リース車は、保険がリース料に含まれるか、事故時の修理や解約の扱いがどうなるかも確認する

黒ナンバーに任意保険が必要な理由

東北運輸局の「貨物軽自動車運送事業をはじめる方へ」では、遵守事項のひとつとして、貨物の運送に関し損害賠償に対応できる任意保険(共済)への加入が必要と明記されています。運輸支局に提出する経営届出書の宣誓書にも、「貨物の運送に関し支払うことのある損害賠償の支払い能力を有すること」を宣誓する項目があります(滋賀運輸支局の記載例)。

つまり、任意保険は「入っておくと安心」というだけでなく、事業を始める前提として、準備しておくべきものです。開業準備の全体の中での位置づけは軽貨物で開業する手順で、届出書の書き方は貨物軽自動車運送事業経営届出書の書き方と提出先で確認できます。

自賠責保険で補償される範囲

国土交通省の案内では、自賠責保険・共済は、自動車損害賠償保障法に基づき、すべての自動車に加入が義務付けられている保険です。加入していないと車検を受けられず、加入せずに運転した場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、違反点数6点(免許停止処分)とされています。

一方で、国土交通省は、「物損事故は補償の対象にはなりません。自賠責保険・共済の対象は、人身事故による対人損害賠償のみ」と説明しています。支払限度額は、事故の被害者1人につき、次のように定められています。

損害支払限度額(被害者1人につき)
死亡による損害最高3,000万円
後遺障害による損害最高4,000万円〜75万円(後遺障害等級による)
傷害による損害最高120万円

自賠責だけでは、次のような損害はカバーできません。

  • 相手の車や建物、ガードレールなどを壊したときの賠償(対物賠償)
  • 自賠責の限度額を超える対人賠償
  • 自分自身のけがの治療費や、休業中の収入
  • 自分の車の修理費
  • 運んでいる荷物の破損や紛失

国土交通省は、死亡事故や障害が残る事故では、自賠責の支払限度額を超えた賠償金を支払う義務が生じることがあると説明しています。任意の自動車保険・共済は、この限度額を超えた対人賠償や、自賠責の対象にならない対物賠償などに備えるものです。保険料や支払限度額、支払いの対象は、商品ごとに異なります。

運んでいる荷物の責任|商法の定め

運送の仕事では、人や物への賠償に加えて、預かった荷物そのものへの責任があります。商法第575条は、運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間に、その運送品が滅失し、もしくは損傷し、またはその原因が生じ、または運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。ただし、運送人が、運送品の受取、運送、保管、引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りではありません。

商法の条文内容
第575条(運送人の責任)運送品の受取から引渡しまでの間の滅失・損傷・延着による損害を賠償する責任。注意を怠らなかったことを証明すれば、責任を負わない
第576条(損害賠償の額)滅失・損傷の場合の賠償額は、引渡しがされるべき地と時における運送品の市場価格によって定める。運送人の故意または重大な過失があるときは、この規定は適用されない
第577条(高価品の特則)貨幣、有価証券その他の高価品は、荷送人が運送を委託するときに、種類と価額を通知した場合を除き、運送人は、滅失・損傷・延着について、損害賠償の責任を負わない(運送人が高価品であることを知っていたときなどは除く)

たとえば、配送中の事故で荷物が壊れた場合、荷物の損害は、自賠責の対象になりません。一般的な自動車保険の範囲に入らないこともあるため、荷物の補償をどの保険で備えるかを、保険会社に確認する必要があります。委託元や荷主が、ドライバーに一定の保険加入を求めている場合もあるため、契約前に取引先の条件も確認しましょう。商法の条文は、e-Gov法令検索の現行のものです。個別の責任の範囲は、契約や状況によって変わるため、判断が必要な場合は、専門家に相談してください。

任意保険で確認したい補償内容

任意保険の補償は、保険会社や商品によって、名称や組み合わせが異なります。ここでは、黒ナンバーで配送をする個人事業主が確認しておきたい観点を整理します。

補償の対象確認するポイント
相手へのけが(対人賠償)自賠責を超える部分を、どこまで補償するか。支払限度額が無制限かどうか
相手の物(対物賠償)車や建物、店舗の設備などへの賠償の範囲と、支払限度額
自分のけが(人身傷害・搭乗者など)一人で働く場合、休業時の収入をどう備えるか
自分の車(車両保険)修理費の負担。リース車では特に重要。免責金額(自己負担)の有無
預かった荷物(貨物の補償)一般的な自動車保険の範囲に入らないことがある。貨物を対象にした保険があるか、保険会社に確認する
事故時の対応事故の連絡先、24時間の受付、代車の手配、修理工場の指定

保険法第19条は、保険金額が保険価額に満たないときは、保険給付の額を、その割合で減らす(一部保険)と定めています。また、第20条は、同じ損害について複数の保険契約がある場合の扱い(重複保険)を定めています。補償の重なりや不足がないか、更新のたびに確認しましょう。

使用目的と運転者の範囲を、正しく伝える

保険法第4条は、損害保険契約の締結に際し、保険契約者または被保険者になる者は、保険者になる者が告知を求めた重要な事項について、事実の告知をしなければならないと定めています。保険法第28条は、故意または重大な過失により、告知事項について事実を告知せず、または不実の告知をしたときは、保険会社が契約を解除できると定めています。

任意保険は、車の用途や使用目的、運転する人の範囲によって、引き受けの条件が変わります。事業用の黒ナンバーであること、配送に使うこと、家族が運転するかどうかを、申込み時に正しく伝えましょう。実態と違う内容で契約すると、事故のときに、補償が受けられないおそれがあります。保険法第29条は、契約の締結後に、告知事項についての危険が高くなった場合に、契約で通知すべき旨が定められていて、故意または重大な過失で通知をしなかったときは、保険会社が契約を解除できる場合があると定めています。仕事の内容や運転者が変わったときは、保険会社に連絡しましょう。

加入の進め方

保険を決めるまでの流れ

  1. 条件を確認取引先が求める保険の条件を確認する
  2. 情報を整理車検証の情報と、黒ナンバーへの変更予定日を整理する
  3. 見積もりを依頼事業用の契約を扱う保険会社・代理店・共済に依頼する
  4. 比べて決める補償の範囲、免責金額、事故時の連絡先を比べる

補償の開始日は、事業で車を使い始める日に、間に合わせます。

インターネットで申し込める保険の中には、事業用の車や黒ナンバーを引き受けの対象外としている商品もあります。申込み画面で事業用を選べない場合は、無理に自家用として契約せず、保険会社に直接確認しましょう。保険料は毎月の固定費として大きな割合を占めるため、燃料費や整備費と並べて、軽貨物の車両維持費で月単位に整理しておくと、資金計画が立てやすくなります。

加入したあとも、取引先が変わったとき、家族が運転するようになったとき、車を入れ替えたときは、補償内容が今の働き方に合っているかを見直しましょう。更新の案内が届いたタイミングで確認する習慣をつけておくと安心です。

リース車の場合に確認すること

カーリースは、車の利用方法や中途解約に制限があるなど、購入とは異なる点が多い契約です。今治市の消費生活情報でも、契約期間、支払総額、利用制限、中途解約の可否と解約料の計算方法、満了時の精算方法などについて、納得するまで説明を受けるよう呼びかけています。保険についても、次の点を契約前に確認しておきましょう。

  • 任意保険がリース料に含まれるか、自分で手配するか
  • 含まれる場合、補償の範囲と、黒ナンバーでの事業利用が対象になっているか
  • 車両保険の加入が求められるか、事故で修理するときの費用負担はどうなるか
  • 全損になった場合に、契約が終了するか、解約金が発生するか

日本自動車リース協会連合会(JALA)は、ファイナンスリースでは、契約内容によっては、自動車諸税・自賠責保険・任意保険を含めない場合もあると説明しています。月額にどこまで含まれるかは、ファイナンスリースとメンテナンスリースの比較でも整理しています。事故が起きたときの連絡の順番や、リース会社への報告は軽貨物で事故が起きたらで解説しています。

よくある質問

自家用の保険を、そのまま黒ナンバーで使えますか?

保険の契約は、用途や使用目的によって、引き受けの条件が変わります。自家用の契約のまま事業用に使うと、事故のときに補償が受けられないおそれがあります。黒ナンバーに変えるときは、保険会社に、事業用に使うことを伝えて、契約の内容を確認してください。

荷物が壊れたときは、どの保険で補償されますか?

自賠責保険は対象外です。任意の自動車保険も、荷物の補償が含まれないことがあります。荷物を対象にした保険があるか、保険会社に確認してください。運送人は、商法第575条により、運送中の荷物の損害について、責任を負う場合があります。

高価な荷物を運ぶときは、どうしたらいいですか?

商法第577条は、貨幣、有価証券その他の高価品は、荷送人が運送を委託するときに、種類と価額を通知した場合を除き、運送人は、滅失・損傷・延着について、責任を負わないと定めています。高価な荷物を預かるときは、その扱いを取引先と事前に確認し、書面に残しましょう。

保険の申込みで、うっかり違う内容を伝えたら、どうなりますか?

保険法第28条は、故意または重大な過失により、告知事項について事実を告知せず、または不実の告知をしたときは、保険会社が契約を解除できると定めています。気づいた時点で、保険会社に連絡して、訂正しましょう。

保険料は、経費にできますか?

事業に使った部分が、必要経費の対象になります。私用でも使う車の場合は、事業に使った部分を、明らかに区分できる金額に限ります。詳しくはカーリースの費用はどこまで経費にできるかで説明しています。

事故のあと、保険はどう使いますか?

事故の直後は、負傷者の救護と警察への報告を優先し、そのあとに保険会社へ連絡します。連絡の順番や、事故記録・事故報告は軽貨物で事故が起きたらで説明しています。

まとめ

黒ナンバーの車には、すべての自動車に義務付けられた自賠責保険に加えて、損害賠償に対応できる任意保険(共済)への加入が必要とされています。自賠責は人身事故の対人賠償のみが対象なので、対物賠償、自分のけがと車、預かった荷物の補償をどう備えるかを、取引先の条件も踏まえて、保険会社と相談して決めましょう。申込みでは、使用目的と運転者の範囲を、正しく伝えることが大切です。

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出典・確認先

本記事は一般的な情報です。契約条件は各サービス提供会社の公式情報を、税務・手続きについては専門家や公式窓口をご確認ください。

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